お湯がぬるくなるまでに、花を飾る 〜こどおば部屋の窓辺で〜

人や物の名前が出てこない。脳を活性化させるのだ!!アウトプット開始!!

【アラフィフの誤算】「保険の入れ歯」の凄まじい違和感!ブラジルまで落ち込んだ完熟レディの絶望と堅あげポテトの儀式

おはこんばんちわ。
本日もキーボードを叩き、切なすぎるアウトプットをネットの海へ捧げにやってまいりました、みらくるあっちんでございます。

 

……しかし。

 

本日の私は、かつてないほどに、どっぷりと鬱々としております。
なぜって、とうとう、あの「ブツ」が出来上がってしまったからなのであります。

 

そう、入れ歯。

歯医者のトレイの上で鎮座していたそれは、私の貧困な想像力を遥かに、それはもう遥かに超越してデカかった。

「え? これ、本当に私の口に入るサイズですか?」と、危うく主治医の胸ぐらを掴みそうになるレベル。

左上の奥に3本、そして右に1本。その計4本の人工歯がついた、上あごの天井という天井を余すことなく分厚い絨毯で密閉したような、巨大なピンク色の構造体がそこにあった。

 

ちょっと待ってくれ。

 

先日の私は確かに、「そうだ! 入れ歯にしよう!」と、まるで京都へ旅行にでも行くかのようなポジティブ極まりない気分でいたはずだ。

 

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しかし、これほどまでに口内占有率の高い「要塞」を渡されるとなると、話は根底から変わってくる。

 

今回、私が果敢に挑戦するのは「保険適用・バネ付き入れ歯」。
美を追求するロリィタの精神からは最も遠い、きわめて実用主義的なプラスチックの塊。

 

「はぁーい、じゃあ早速入れてみましょうねぇ」

 

間髪入れず、私の繊細な口内へと、それはガチッとドッキングされた。

 

その瞬間、私の全細胞が震撼した。

 

(……う、動けない……ッ!)

 

異物感という言葉では生ぬるい。それはまるで、かつて型取りの際に上あごに押し付けられた、あのピンク色の冷酷なガム状の物体が、永久にそこに居座り続けるかのような絶望的な圧迫感。

 

「どうですかー? 噛み合わせ、違和感あります?」

 

先生に尋ねられた私の脳内はパニックである。まず、話し方がわからない。声の出し方が、綺麗さっぱり記憶から消去されている。私の口は、自らの意思を表明するための器官であることを放棄したのだ。

 

「ひぇんひぇい……はなへないでふ……」

 

どう、と聞かれても答えようがない。すべての言葉が上あごのプラスチックに吸収され、母音だけで構成された謎の古代言語のようになってしまう。

 

内心、これは本気でヤバイと思った。
何を隠そう、私の現世での生業は「電話で喋りまくる仕事」なのである。喋れないということは、すなわち失業。明日からの路頭に迷う私の姿が、ヴェルサイユ宮殿の崩壊よろしく脳裏をよぎった。入れ歯の関係を通り越して、私は人間としての尊厳、すなわち「言葉」を失ったのだ。

 

いったん口から出してもらい、「全く話せません!」と涙目で猛抗議をしたところ、先生は「あ、じゃあ上あごを覆っている部分を少し削りましょうね」と、あっさりのたまった。

 

チュイィィィンという小気味いい音とともにくりぬかれ、要塞は「U字型」へと姿を変えた。

 

 

再び装着。

 

……うん、さっきよりはマシだ。マシにはなったが、圧倒的に話しづらい。

「入れ歯を入れたら、そこはもうパラダイス! 好きなものをガシガシ噛める新世界!」くらいのハッピーなテンションでいたものだから、私の心は一気に地球を突き抜け、ブラジルの裏側まで音を立ててパキーンと落ちていった。

 

体感としては、硬質なプラスチックの定規が、上あごにアロンアルファでずっと貼り付けられている感じだ。まあ、実際その通りなのだからぐうの音も出ない。

 

世の中の入れ歯の先輩方は、毎日こんな苦行に耐えているのか……と思うと、全人類への愛おしさと胸の苦しさで視界が滲む。

 

見かねた先生が、わかりやすく絶望しきっている私を珍しく熱いトーンで励ましてくれた。

「あっちんさん、今回のはあくまで『お試しの入れ歯』ですから!! 練習です!!」

 

そうだ、落ち着け、私。

いったん入れ歯を試してみようと言い出したのは、他ならぬこの自分ではないか。もしこれがどうしても身体に馴染まない場合は、もっと薄くて快適な金属床の入れ歯や、あの高額なインプラント(最新鋭の杭打ち工事)という選択肢がこの世界から消えたわけではない。死ぬわけじゃないのだ。そう自分に言い聞かせ、魂が半分抜けた状態で帰宅した。

 

家に帰り、私はある「儀式」を執り行うことにした。

かつてジルコニアの仮歯がガタガタだったあの暗黒期、最も食べるのが恐ろしかった「堅あげポテトチップス」をあえてコンビニで買ってきたのだ。

 

いざ、実食。

 

……。

 

食べにくいが、食べられなくはない。
そして当たり前だが、左上が「歯抜けの更地」だった状態に比べれば、明らかにしっかり噛める。

だけど、噛むたびにポテトの微細な破片が入れ歯の隙間に容赦なく入り込んできやがる。この異物感、半端ではない。

 

静まり返った部屋で、少し声を出してみた。

 

「き」
「ち」
「み」

そして、ラ行全般。

 

が壊滅的に発音しにくい。

 

 

本日は、お耽美なポエジーも、軽妙なジョークも、何ひとつ面白おかしく話すことができない「魂がブラジルまで抜けたまま」のあっちんでございました。

 

次回の歯医者は、相も変わらず2週間後。……遠い。